聖母マリアの服は決まっている? 絵画の“約束事”とは【美術鑑賞のツボ/後編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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聖母マリアの服は決まっている? 絵画の“約束事”とは【美術鑑賞のツボ/後編】

美術館賞を楽しむための5つのツボ②

◆ジャンルを超えて見ることで、画家それぞれの思いを知る

 絵画を見る時は「印象派に興味があるから」「写実主義が好きだから」など、偏った鑑賞をしがちなもの。しかし佐藤さんは「好きな絵ばかり見ず、いろいろな絵を見れば目が養われ、知識も増えます。誰もが知る有名な作品にも、影響を受けた作品とそれを超えようとした作者の思いや時代の流れがあるということがわかるようになります」と話す。
 例えば西洋美術の世界で描かれ続けている裸婦は、女性の体をいかに美しく描くかがルネサンス期からのテーマだった。その概念を崩したのがポスト印象派の巨匠、セザンヌの『大水浴図』だ。
「セザンヌは単に裸婦を描くというのではなく、ここに三角形の構図を作りたいなどと、物体のように裸婦を描きました」。

 セザンヌに影響を受けたとされるピカソも、それまでの裸体画とはまったく異なる表現をしている。
「物語もなく、美しい裸婦もいない『アヴィニヨンの娘たち』は、西洋画の伝統を破壊したという意味で画期的で、この絵は20世紀美術の出発点ともいわれます」。
 写真のように描くのではなく、絵でしか表現できないことをやろうというピカソの姿勢は後の現代美術にもつながるといえよう。

次のページお決まりの約束事を知れば、絵画鑑賞がより面白くなる!

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佐藤 晃子

愛知県出身。明治学院大学文学部芸術学科卒業、学習院大学大学院人文科学研究科博士課程前期課程修了。西洋や日本の美術をわかりやすく紹介する著書の執筆を手がけるライターとして活躍。美術に関する講演も多数。


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